2016年度 日本建築学会大会[九州] 日程:2016年8月24日・25日・26日会場:福岡大学七隈キャンパス

会長挨拶

日本建築学会(以下本会)は、会員相互の協力によって、建築に関する学術・技術・芸術の進歩発達を図ることを目的とし、1886年(明治19年)に創立されました。今年4月9日に創立130周年を迎えた本会は、わが国の工学系学会のなかでも最も歴史の古い学会の一つで、創立以来現在に至るまで、わが国建築界において常に先導的な役割を果たしてきました。

毎年開催される大会は、約1万名もの会員が一堂に会して日頃の研究成果を発表し、さまざまな討議を通じて互いが研鑽しあう、本会が主催する最も重要な行事の一つです。また大会に併せて、開催地域の皆様には、美しくそして災害にも負けない建築・都市づくりや、建築に関わるさまざまな文化の発信等、本会の社会貢献活動へのご理解を深めていただくために、講演会やシンポジウムを開催しています。本年度の大会メインテーマは「みんなと建築」です。本会創立130周年記念大会として、特別講演などの記念行事も開催いたします。

東日本大震災から5年が経過し、地域に住まう方々、それを支える行政、私達建築の専門家や他分野の専門家が協働して、復興への歩みを加速しようとする矢先に、今度は九州熊本県を中心に、4月14日と16日の2度にわたって震度7の地震が襲い、大きな被害をもたらしました。被害に遭われた方々に心よりお悔やみとお見舞いを申し上げる次第です。本年度の大会が同じ九州で開催されるのも因縁かと、今回の災害に関する調査・研究を一層推し進め、国と地域の防災・減災に向けて全力を挙げる所存です。

さらに、地球規模で見れば人口が増え経済活動の活性化に伴い多くの開発が進む一方で、わが国においては、成長型社会から成熟型社会へと大きな転換期を迎えるという状況下、私達は、人類の持続的発展をこれからどう維持するかという究極の問題に向き合わなければなりません。人類の持続的発展には新しい生き方を思考しなければなりませんが、その過程において、人と建築に関わる社会の要請に的確に応えることを使命とする本会が果たすべき役割には多大なものがあります。

大きな転換期を迎えるわが国の新しい生き方と、その基盤を支える建築が取り組むべき事項について、建築が本来もつ「豊かな学際性」を発揮してともに思考し行動する機会を、この大会が提供できることを祈念して止みません。多くの会員の皆様のご来場をお待ち申し上げる次第です。

日本建築学会九州支部長・大会委員長 黒瀬重幸
日本建築学会会長中島正愛

大会実行委員長挨拶

4月14日の夜、2016年熊本地震が発生しました。翌々日の16日深夜にはM7.4、震度7の本震が襲い、その後も地震は収まらず、熊本から大分にいたる広い範囲に被害は拡大しました。熊本地震で被害に遭われた、多くの方々に対しまして、改めて心よりお見舞い申し上げます。また不幸にもお亡くなりになられた方々に対しまして、心より哀悼の意を表します。

大地震のような大きな災害に直面しますと、それまであたり前であった平穏な日常は一瞬にして失われ、大きな苦難が人々を襲うことになります。特に住宅は、人々にとって重要な生活基盤でありますが、今回の地震では、多くの住宅が大きな被害を受けました。都市、建築、住宅に深く関わる本会としましては、このような災害に対する責任の重さを深く認識し、またこのような非常時における被害の程度を少しでも軽減するための努力を地道に続けることが、重要と考えます。

今年の8月には日本建築学会の全国大会が、福岡大学で開催されます。全国の大学関係者を始めとし、建築設計・施工に関わる民間会社の方々や、国公立や民間の研究所の方々など約1万名が一同に会し意見を交わす日本建築学会の全国大会は、ここに述べたような問題の緩和に向けた活動を進めるために、またと無い貴重な機会になると思います。

建築学会大会の福岡大学での開催は、2007年以来9年ぶり2回目となります。メインテーマとしては、「みんなと建築」を掲げました。人と建築に関わる社会からの様々な要請に、本会が適確に応えて行くことは大変重要です。しかし建築活動は、建築の専門家のみにより進めることができるものではありません。優れた建築とは、建築専門家と多くの市民の方々との協働の中で、初めてつくりあげることができるものと思います。様々な問題に取り組むための新たな方向性を模索する中、多くの市民の方々の視点から、人々の暮らしと生活を支え、都市・地域とともに生きる建築のあり方を、今一度、見つめ直してみたいと思っています。

さて、この様な主旨から、この夏、福岡大学で開催される建築学会全国大会に、是非皆様足をお運び頂いて、活発な意見交流の場となりますようお願いしたいと思います。特に本大会では積極的に地域の人々にも働きかけて、地域からの参加を促し、地域に開かれた学会大会を目指しています。単なる学術交流ではなく、一般の地域の方々との交流を育むことにより、実りある学会大会となりますことを願っています。そのために、「記念特別講演会」を始めとし、様々な「都市建築見学ツアー」を企画致しております。また九州は海産物を始めとする食の宝庫でもあります。大会初日に行われます大会懇親会では、「博多の宴」と銘打ち、多くの食材と九州の銘酒を取りそろえて、皆様のご来場を心よりお待ち致しております。

今年度の日本建築学会大会が、皆様のご支援によりまして有意義に執り行われますことを心より願っております。

日本建築学会九州支部長・大会委員長 黒瀬重幸
大会実行委員長稲田達夫

日本建築学会130周年記念大会(九州)に向けて

2016年(平成28年)、日本建築学会は、創立130周年を迎えました。節目の130周年記念大会は九州、福岡市の福岡大学七隈キャンパスを中心に8月24日(水)~26日(金)の3日間に亘って開催されます。また、今年は九州支部の創立80周年、建築九州賞の創設10周年の年でもあります。

日本建築学会は、会員相互の協力のもと、建築に関する学術・技術・芸術の発展を図ることを目的としていますが、建築活動は、建築の専門家だけではなく多くの市民との協働作業であり、市民との連帯が重要であるという視点から、大会のメインテーマは「みんなと建築」としています。一方、このテーマは、130周年記念の統一テーマである「建築としての声を一つに」に呼応するものでもあります。この統一テーマは、人類の持続的発展を可能にするために様々な人々が参加する共創を積極的に推進しようとするものです。つまり、建築活動をとりまく様々な分野、文化、風習、年齢、性別の間の垣根をはずし、共働、共創することをめざしています。

九州は古代以来、人が住み続けてきた大地であり、豊かな自然と歴史に彩られた地域です。また、辰野金吾、村野藤吾、菊竹清訓、磯崎新といった日本近現代建築史上の名だたる建築家を生んだ風土としても有名です。この機会に彼らを育てた風土とその地に残る建築を堪能して欲しいものです。

思えば、2006年(平成18年)、日本建築学会は120周年記念関東大会を開催しています。その後、2011年3月11日に起こった東日本大震災は、建築に携わる専門家ばかりではなく、すべての人々に社会的な絆の重要性を再認識させることになりました。そして、2016年4月14日の前震から15日の本震、その後の余震に至る熊本地震は、追い打ちをかけるように建築活動のあり方を私たちに問いかけています。建築、都市に深く関わる本会といたしましては、このような災害に対する責任の重さを痛感し、熊本地震発生直後から本部の「災害委員会」を中心に調査活動を行うとともに、被災者支援、復旧復興支援活動等の一助とすべく本会九州支部に「災害調査委員会」を設けました。これからも随時情報を発信していく所存でございます。

日本建築学会九州支部長・大会委員長 黒瀬重幸
日本建築学会九州支部長・大会委員長黒瀬重幸
日本建築学会 創立130年記念ロゴ