日本建築学会は1886年(明治19年)4月、私たちの先達26名の発起人によって造家学会として設立され、本年、創立120周年を迎えました。本年度の大会は、創立120周年記念事業の一環として位置づけ、大会のメインテーマも記念事業の共通テーマとあわせて「社会とともに−建築」といたしました。
近年、わが国の社会・経済・産業の構造は大きく変化し、また地球環境問題のような建築に関連の深い深刻な課題も顕在化してきました。この間、建築技術は高度化・複雑化し、建築の設計・生産体制も大きく変化しつつありますが、新しい状況への建築界の対応は十分とはいえません。一方で、耐震強度偽装問題のように建築界に対する国民の信頼を大きく毀損するような不祥事も発生し、建築の設計・生産システムを抜本的に改革することが強く求められています。
大会は1万名に近い会員が一堂に会して日ごろの研究成果を発表し、討論し、研鑽する場であると同時に、建築分野の抱えるさまざまな課題を総合的に検討する絶好の場でもあります。「社会とともに−建築」のメインテーマのもと、学術団体の原点にたちかえっていっしょに考える機会にしたいと祈念しています。多数の会員の参加をお待ちしています。
建築学会大会が横浜地区で開催されるのは1984年の横浜国立大学以来約20年ぶりになります。当時の発表題数は2944題、参加者総数は4806名ですから、昨年度近畿大会ではいずれも約2倍の規模に発展しているということになります。しかし、梗概集の内容で見ますと、構造・計画・環境の各系の構成内容、題数の伸び率には変化や相違があるようです。
さて、今年度の大会は「建築学会創立120周年記念大会」という冠付きの大会となりました。これをうけて、記念行事等も横浜・神奈川といった開催地を中心とした地域の特徴をアピールする企画に加えて、120周年記念行事も企画しました。
大会のメインテーマは、本部の120周年記念テーマにあわせて、「社会とともに−建築」です。建築は人の多様な営みを支えるあるいは新たな有り様を提示する重要な行為の一つですが、戦後復興、大量生産、大量消費の時代を経た今、その基本理念には、安全・安心を考える、地域を考える、日本を考える、地球を考える、といった視点が求められつつあるようです。次の時代に向けた日本型建築教育システムの構築も不可欠の視点です。
少しでも多くの皆さんに、幕末の「開国」とともに歴史を刻み始めた”港街横浜”に集って頂き、建築学会創立120周年を祝い、さらなる発展を祈念して頂ければ幸いです。