ご挨拶

会長挨拶

日本建築学会会長 古谷誠章
日本建築学会会長古谷誠章

日本建築学会は、広く建築に関する学術・芸術・技術の発展を図ることを目的として1886年(明治19年)に創立され、一昨年に130周年を迎えています。会員数は約3万5千人、わが国の工学系の学会としては最も古いものの1つで、活発に活動し社会貢献を続ける学術団体として、わが国建築界においてつねにリーダーシップを発揮しております。毎年開催される本会大会は、その最も大切な行事のひとつで、約1万人の会員が集い、総計6千題を超える学術講演、建築デザイン発表会、関係する多くのシンポジウムや研究協議会などが開催されます。また毎年、大会の開催と併せて、開催地の会員諸氏の尽力により、人々の豊かな生活環境を創出するための、建築やまちづくり、子ども教育などに関わる講演、歴史や文化の発信、災害復興や環境保全に資する様々な情報提供など、ひろく社会一般に向けた催しも数多く企画されています。

東日本大震災以来初めてとなる、東北仙台で開催される今年の大会のメインテーマは「記憶/未来」。その後も熊本地震、あるいは豪雨や台風などの自然災害も続いており、加えて都市部への人口集中や、空き家問題、地域コミュニティの維持などの困難な課題を抱えるわが国では、今後ますます分野や領域を超えた交流、世代を超えた知恵の継承、みんなが相互に育て合う関係の構築が望まれています。東日本大震災に続く原発事故による被害、その後も間断なく続く困難な諸問題に対し、その復興は未だに道半ばであり、また一方では2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた急速な都市開発や施設整備に伴って、新たな社会問題も沸き起こる中で、今まで以上に建築界が一丸となって取り組まねばならない課題が山積しています。

もとより建築という学問分野は、歴史、計画、都市計画、環境、構造、建築生産など、幅広いジャンルの統合の上に成り立つ性質を持ち、様々なエキスパートがお互いに絶えず研鑽し、協働する中から、未来のための豊かなアイディアが生まれます。その象徴的で大きな場が、皆さんの集まるこの大会です。ぜひ多くの会員の参加と、次世代を育てる活発な議論をいたしましょう。

大会委員長挨拶

大会委員長 小林 淳
大会委員長小林 淳

現役世代にとって、旅行を趣味とするのは夢のような話です。建築学会年次大会は、研究発表・情報交換の場であると同時に、社会探訪の数少ないチャンスでもあります。会員活動を10年も重ねると、概ね開催場所の順番がわかるようになり、日ごろの研究成果をまとめながら旅の計画を立てることも楽しみのひとつではないでしょうか。震災を含めた9年を経過して、前回の仙台とは様変わりしているところも数多くあります。

本年度の大会は、9月4日(火)~9月6日(木)に東北大学川内北キャンパスで開催されることになっております。平日開催ですので、家族サービスに気兼ねすることなく出張に専念できるタイミングとなっています。会場への交通アクセスも極めて良好で、市内の主要ホテルから地下鉄等を用いて10~20分程度で到着できます。市内ホテルの相当数はすでに主催者側で確保しておりますのでご安心ください。発表会場もコンパクトに設営されており、雨天を気にすることなく会場間の移動が可能です。ご参加の皆様に充実した日々を過ごしていただけますよう、東北支部一丸となって準備を進めております。

今大会のテーマ「記憶/未来」には、震災の痛手から立ち上がりつつある東北の姿を再認識し、明るい未来をいかに創造していくべきかという想いが込められているように思います。記念シンポジウム「祈りを包む建築のかたち」と連携シンポジウム「みやぎボイス2018」では数多くの問題提起がなされ、建築を担うべき人々が将来に向けて解決すべき諸課題が論じられることでしょう。先日機会があり、海岸沿いの町をいくつか見てきましたが、複雑な感想を抱きました。未来に向けて我々に何が求められているのか、一緒に考えてみようではありませんか。

学術講演会を堪能した皆様には、大会恒例の見学ツアーへのご参加はいかがでしょうか。一例として、被災地域をめぐる企画から、身近な建築物を含めた建築遺産などの探訪も準備されています。秋の早い東北で、好天に恵まれた散策となることを祈っております。

最後になりますが、初日夕刻に開催される懇親会の会場は仙台駅隣接のホテルになっており、新幹線直結です。当日夕刻からご参加の皆様、あるいは当日中に帰路に着く皆様、いずれの場合にも、極めて高い利便性が確保されております。学術交流だけではなく、会員相互の親睦をより一層深めるとともに、東北の味と文化を堪能していただく場として、担当部会では心のこもった企画を準備しております。初めて参加される方もお気軽に、是非とも多くの皆様にご来場いただけるようお願い申し上げます。

大会実行委員長挨拶

大会委員長 松本真一
大会実行委員長松本真一

2018年の日本建築学会大会が、仙台市の青葉山の山裾の広瀬川のほとりに拡がる東北大学川内北キャンパスを中心会場として、9月4日(火)~9月6日(木)の3日間にわたって開催されます。日本建築学会東北支部がホストを務める大会としては、2009年(東北学院大学・仙台市)以来、9年ぶりになります。

この9年の間に我々は、東北地方太平洋沖地震(2011年3月11日)に見舞われ、東北地方の岩手県、宮城県、福島県を含む広い範囲におよぶ大災害を経験しました。また、昨年の大会が開催された広島における土砂災害(2015年)や熊本地震(2016年)など、毎年のように災害に見舞われてきました。様々な災害に対して我々学会員は、被災者を悼みつつ、建築物の持つべき安全性・防災機能性などに関する知見を蓄え、復旧・復興に力を尽くしてきたところです。その一方で、2020年に開催される東京オリンピックの施設計画・建設など、近未来の夢のある事業にも寄与しています。さらには、気候変動という地球規模の問題に対して、例えば「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2015年国連)の掲げる行動計画や目標に呼応するような、建築分野での取り組みにも中長期的な展望のもとに関わっています。

上に述べた我々の取り組みは、広く言えば、先人たちの知見を土台に、新たな問題に対応可能なように展開し、それを建築技術や建築文化に昇華させて実践し、また学識(知識・見識)として蓄え、さらに次の世代に引き継いでいく行いと言えましょう。

月並みな例になりますが、人は誰しも今は失われたかも知れないふるさとの情景を「記憶」として持っています。そして「未来」の好ましい情景をイメージできます。イメージとしての「記憶」にも「未来」にも、必ずや建築や街並みが登場するのではないでしょうか。建築は「記憶」をつくり、「未来」を編む力のある社会的な仕掛けです。仙台で開催される本年度の建築学会大会のメインテーマ「記憶/未来」は、このようなことを念頭に設定したものです。

東日本大震災を経験した東北、復興途上にある東北三県においては、建築の「記憶」、そして祈りをも込めた建築の「未来」という視点を共有した上で、地域を巻き込みながら、新しい知見に満ちた学術的な議論が活発に交わされ、仙台の地からそうした情報が発信されることに大きな意味があり、大会の成功を願ってやみません。

一般の人たちを対象とする記念シンポジウム「祈りを包む建築のかたち −福島・世界を念いながら−」、連携シンポジウム「みやぎボイス2018 −次の社会の在り方につなげる試み−」、見学会の1コースである「被災地域と現代建築をめぐるバスツアー」、関連共催シンポジウム「津波に負けない住まいとまちづくり」などなど、メインテーマにちなんだ行事も計画しておりますので、奮ってご参加いただければと思います。また、地下鉄東西線が開通し、コンパクトでますます交通アクセスが便利になった仙台の観光名所、食文化にも、この機会に触れていただけましたら幸いです。