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ご挨拶

会長挨拶

日本建築学会は、広く建築に関する学術・芸術・技術の発展を図ることを目的として1886年(明治19年)に創立され、昨年4月には創立130周年を迎えました。現在の会員数は約3万5千人を数えており、わが国の工学系の学会としては最も古いものの1つ、活発に活動し社会貢献を続ける学術団体として、わが国建築界においてつねにリーダーシップを発揮しております。

毎年開催される本会大会は、その最も大切な行事のひとつで、約1万人の会員が集い、総計6千題を越える学術講演、建築デザイン発表会、関係する多くのシンポジウムや研究協議会などが開催される本会最大の行事となっています。また毎回大会の開催と併せて、開催地会員の皆様の尽力により、人々の豊かな生活環境を創出するための、建築やまちづくりに関わる講演、歴史や文化の発信、災害復興や環境保全に資する様々な情報提供など、ひろく社会一般に向けた催しも数多く企画されています。

広島で開催される今年の大会のメインテーマは「育てる」。地震などの自然災害も多く、都市部への人口集中や、国全体での急速な少子高齢化が進むわが国では、今後ますます分野や領域を超えた交流、世代を超えた知恵の継承、みんなが相互に育て、育て合う関係の構築が望まれています。わけても東日本大震災とそれに続く原子力発電所事故による災害、さらには豪雨による災害や、熊本での地震災害と、間断なく続く困難な諸問題に対し、その復興は未だに道半ばであり、また一方では2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた急速な都市開発や施設整備に伴って、新たな社会問題も沸き起こる中で、今まで以上に建築界が一丸となって取り組まねばならない課題が山積しています。

もとより建築という学問分野は、歴史、計画、都市計画、環境、構造、建築生産など、幅広いジャンルの統合の上に成り立つ性質を持ち、様々なエキスパートが絶えず研鑽し、協働する中から、豊かな未来のためのアイディアが生まれます。その象徴的で大きな場が、建築に関係する皆さんが集まるこの大会です。ぜひ多くの会員の皆さんの参加と、次世代を育てる活発な議論を大いに期待しています。

日本建築学会 会長 古谷誠章
日本建築学会会長古谷誠章
大会委員長挨拶

米国新大統領の誕生や英国のEU離脱、北朝鮮の核開発など、国際情勢は混沌として先が見えません。地球温暖化に対してもなかなか有効な手立てを講ずることができず、資源枯渇や環境破壊など、世界は未曾有の困難に直面していると言えます。我が国の建築業界においても、少子高齢化の加速度的な進行により、老朽化した膨大な建築ストックが蓄積される一方、各地に限界集落が出現するなどの事態を迎え、これは一例に過ぎませんが、解決されるべき課題がまさに山積しております。

このような様々な問題への対処には、次世代を担う若者達の力が必須となりますが、それでは私達は彼らに何を伝え、どのように育んできたのでしょうか。今まさにこのことが問われていると考え、今年度の大会メインテーマは「育てる」とさせていただきました。建築の様々な分野に携わる方達が一同に会する、この中国地方で開催される大会を、私達がこれからなすべきことを改めて考えていただく機会の一つとしていただければ幸甚に存じます。

さて、今年度の大会は、約30年ぶりに会場を広島市内に移し、広島工業大学にて8月31日(木)から9月3日(日)までの4日間にわたって開催させていただきます。中国支部担当の大会は、前回が2008年、前々回が1999年でしたが、いずれも広島大学での開催でした。緑あふれる自然豊かなキャンパスではあるものの、広島市内から約40 kmとあまりに遠く、参加者の皆様には多大なご不便をおかけしたかと存じます。広島工業大学は広島市中心部から約10kmの至便な地にあり、少なくとも過去2回ほどにはご迷惑をおかけしないのではないかと存じます。

また、広島工業大学の会場ですが、「三宅の森Nexus21」なる新講義棟1棟のみで開催いたします。単独の建物での開催は私の知る限りここ30年間にはなかったことかと存じます。たとえ風雨に見舞われましても、あちこちの会場を、全く傘をさす必要なく訪れることが可能であるという利便性も、多岐にわたる分野の先進的な知見に触れることにより相互のポテンシャル向上を目指すという大会の趣旨に適った、しかしながら近年の大会では実現できなかった今回ならではの特徴と言えるのではないかと存じます。

最後になりますが、広島大都市圏は、原爆ドームと宮島厳島神社というタイプの異なる2つの世界遺産を擁する、あまり他に例のない地域です。前者については構造分野の見学会を、後者についてはより広域の瀬戸内海を対象とした特別講演をそれぞれ予定しておりますが、今回の会場は、この建築的にも極めて価値の高い2つの世界遺産のちょうど中間点に位置しており、いずれにも訪れやすいかと存じます。大会にご参加いただくのみならず、是非、これらの地にも足をお運びいただき、それぞれの異なる魅力をご堪能いただければ幸いです。

今年度の学会大会が成功裏に終了するよう、私ども中国支部担当者一同、鋭意努力を進めております。是非、多くの皆様方にご参加いただきますよう、お願い申し上げる次第です。

大会委員長 西名大作
大会委員長西名大作
大会実行委員長挨拶

2017年の日本建築学会大会が広島市の西稜に建つ広島工業大学メインキャンパスを中心に8月31日(木)~9月3日(日)の4日間にわたって開催されます。広島工業大学で開催されるのは1990年以来2度目となります。

我が国は地震や台風などの災害大国というあまり有り難くない名前をいただいています。昨年の熊本地震は記憶に新しいところであり、2011年の東北地方太平洋沖地震の復興事業も未だ道半ばと言わざるを得ません。その中で、ここ中国地方は比較的自然災害の少ない地域と考えられていますが、2015年に広島市北部で発生した土砂災害では70名を超える犠牲者を出しました。多くの方が自宅で命を失った事に対して、建物の主たる機能としての「安全の確保」が出来なかったことを痛感する次第であります。一方、災害の度に本学会による精力的な調査が行われ、貴重な資料が蓄積されつつあります。これら調査結果で明らかになったことの一つは、建物の建設年代が新しくなるにつれて、被害も少なくなっていることです。一見、当たり前のことのように思えますが、先人が研鑽を重ね、建築技術に対する改善・開発を不断に続けてきたおかげと考えています。このことは技術だけに限りません。我が国固有の建築文化にも当てはまります。先人達が代々守り伝えてきた建物や街並みは世界のどの建築文化にも引けを取りません。最近とみに増えている外国からの観光客からも窺い知れます。我々は先人の築いた土台の上で生活しているにすぎません。先人から受け継いだ技術や文化をさらに発展、洗練させていくとともに次世代に引き繋いでゆくことは安全で豊かな未来を約束するものといえます。

建築学会は構造、計画、環境、歴史、意匠といった様々な分野で構成されており、学会自体が学際領域といってもよいかもしれません。年1度の建築学会大会は建築に携わる人々や建築を学ぶ学生諸君が一堂に会する貴重な機会です。学術講演における新しい知見の提供と活発な情報交換を通じて、建築技術・文化の発展に寄与することを願っています。

広島で開催される建築学会大会では「育てる」をメインテーマとして、様々な行事を企画しました。特に人口が減少している我が国において、次世代を「育てる」ことが技術・文化を発展させ継承してゆく重要な要素と考えたからです。一般の人たちを対象とする「記念シンポジウム」では建築に興味を持つ高校生に参加して頂くことにしています。また、「育てる」のは人だけではありません。街を育て、建物を育てることも含んでいます。見学会では「平和記念聖堂」や「平和記念館」の保存修理工事などを計画しています。奮ってご参加いただきたいと思います。

広島は大都市には無い多くの魅力があります。一つはお好み焼きに代表される豊かな食文化です。食といえば西条のお酒も見逃せません。懇親会では中国地方の銘酒を取り揃える予定にしていますので是非お召し上がり下さい。もう一つは世界遺産の宮島と原爆ドームです。宮島は講演会場となるNexus21から間近に見える位置にあります。平和公園は昨年、アメリカのオバマ大統領が訪問され、核兵器廃絶に向けたメッセージを発信された場所でもあります。両方とも広島の人たちが強い思いで守り伝えた建物が重要な役割を果たしています。4日間というスケジュールの中でご訪問いただけると幸いです。

広島の地で開催される日本建築学会大会におきまして、参加された皆様が有意義な時間を過ごされることを心より祈っております。

大会実行委員長 荒木秀夫
大会実行委員長 荒木秀夫
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