ご協賛の皆様
日程 / 会場
ご挨拶
日本建築学会は、建築に関する学術・技術・芸術について、その発展を図ることを目的として1886年(明治19年)に設立され、2016年に130周年を迎えました。会員数は約3万6千人を擁し、わが国の工学系の学会としては最も古いもののひとつです。社会貢献を続ける学術団体として活発に活動し、我が国の建築界においてリーダーシップを発揮してきました。毎年開催される全国大会は、その最も大切な行事のひとつで、約1万人の会員が集い、総計7千題を超える学術講演、建築デザイン発表会、関係する多くのシンポジウムや研究協議会などが開催されてきました。加えて、大会の開催と併せて、開催地の会員の皆様のご尽力により、「建築」、「まちづくり」、「子ども教育」などに関わる講演、歴史や文化の発信、災害復興や地球環境に資するさまざまな情報提供など、広く社会一般に向けた多くの催しも企画されてきました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症により、昨年度、千葉で開催される予定であった大会諸行事の実開催は残念ながら中止になってしまいました。そのようなこともあり、今年こそはと関係者も切望していました。今年は東海支部の名古屋工業大学で開催が予定されていました。しかしながら、長引く新型コロナウイルス感染症により現地での開催が難しくなりました。学術講演、研究集会などはオンライン形式での開催となります。オンラインで1万人近くが参加するはじめての大会となります。東海支部の大会実行委員会において鋭意努力工夫をこらして企画を進められています。
今年度の大会のテーマは「つなぐ、集う、楽しむ」です。皆でリアルな空間を共有することは出来ませんが、オンラインでどのような大会が出来るのか壮大な社会実験の場でもあります。今後の本会の大会のあり方にも大きな影響があると考えています。今年度の大会から梗概の投稿時にSDGsへの貢献を示すことになりました。未来に貢献できる建築とは何かに関して皆様で議論できればと思います。
建築という学問分野は、計画、設計、構造、環境、生産、材料、防災など、幅広い分野の統合の上に成り立っており、それが建築を特徴づけています。様々な分野の専門家が広範に深く議論、研鑽、協働する中から、独創的なアイディアが生まれてきます。その象徴的な場が、この大会です。デジタル開催の利点も見いだすためにも大会に多くの会員の皆様に積極的に参加いただき、新しい活力に満ちた活発な議論の形が発見できれば良いと考えています。是非、宜しくお願い申し上げます。
我が国の首相、米国の大統領の交代、公正、平等を標榜する民主主義の危機、世界経済の低迷が懸念されている中での中国の経済的、政治的台頭、地球温暖化によるとされる洪水、土砂災害の激甚化、いつどこで起こるかわからない地震への備え、これらに加え2020年から猛威を振るう新型コロナウイルス禍、2021年はオリンピックの開催も含め先が見えない激動の年となりそうです。発災後10年となる東日本大震災の復興状況も気になります。
このような状況下、1931年に設置された東海支部は90周年を迎えます。この90周年に2021年度日本建築学会大会(東海)を迎えられることは大変光栄です。本大会は名古屋工業大学にて9月7日(火)から9月10日(金) までの4日間にわたって開催予定でした。東海支部担当の大会は、前回が2012年(名古屋大学)、前々回が2003年(中部大学)でした。前回同様会場は名古屋市内であり交通至便な場所にあります。しかし、残念ながら今般のコロナ禍によりこれまでのように主会場である名古屋工業大学に皆さんをお招きしての開催は断念せざるを得なくなりました。学術講演、研究集会などはオンライン形式での開催となります。これまでも小さな単位での講演会のWEB配信、コロナ禍が始まってからオンライン会議の普及はありますが、なんといっても1万人近くが参加する大会では経験したことない開催形式であり、皆様にはご不便と、ご心配をおかけしますが、なにとぞご協力をいただき大会を盛り上げてくださるようお願いします。通常大会初日に開催されるいつもの懇親会は取りやめですが、参加者の交流を促す企画は模索中ですし、他の行事についても東海支部関係者鋭意努力工夫をこらして企画を進めております。
「つなぐ、集う、楽しむ」を今年度大会のテーマに設定しました。今年度の大会はWEB開催で同じリアルな空間を共有することはできないにもかかわらずです。現在の情報通信技術で解決できることは多くありますが、なんとなくもやもや感が残ります。本大会を契機にオンラインでは何が足りないのか、何が大切なのかを見つけ、大切なものをどのように守っていくか、育てていくか、足りないものを充当していくか、を探し見つけてゆきたいと思います。時間と気持ちを共有する密な疑似空間を作り出し、足りないものをはっきりさせる大会にしていただきたいと思います。
最後になりますが、愛知、岐阜、三重、静岡は、戦国時代の話題が豊富な地域ですし、伊勢湾、三河湾、英虞湾、木曽三川の恵まれた自然、崇高な伊勢神宮を今回ご案内できないことが残念です。今年度の学会大会が成功裏に終了するよう、私ども東海支部担当者一同、鋭意努力を進めております。是非、多くの皆様方にご参加いただきますよう、お願い申し上げる次第です。
本大会がやっぱり今まで通り東海に集まって学術、文化、人の交流が出来たねとおしかりを受ける状態になっていることを期待しております。
東海地区での開催は9年ぶり、名古屋工業大学での開催は1976年以来45年ぶりの全国大会です。名古屋駅からJR中央線で2駅という至便さ、24haを超える桜の名所鶴舞公園に隣接した名古屋工業大学のキャンパスに建築の仲間が集まり、議論と交流に華やぐ様子を思い浮かべながら2年前からおもてなしの準備を重ねてきました。しかし、その夢は新型コロナウイルスによって無残にも散りました。
日本建築学会大会は、年に一度全国の学会会員と市民が集い、学術講演と研究集会を中心に建築を通した参加者の情報交換と交流を目的としています。学生にとっては先輩方の前で研究成果を披露する緊張の場であり、研究者・実務者にとっては建築界のトレンドを知る貴重な機会です。多くの人が集まれない今年、こうした貴重な機会を提供すべく実行委員会はオンライン開催の形式を選択しました。
2020年度当初から大学でもオンラインによる講義が始まり、オンライン会議形式の授業やオンデマンドビデオの作成などは1年以上が経過した今日、私たちもそれなりに慣れてきました。しかし、数十人で実施する授業とは異なり、建築学会大会は1万名の会員が集う超大規模なイベントです。PDなどの研究集会用にZoomウェビナー6アカウント、Zoomミーティング49アカウントを使った集会が4日間ずっと継続して並列開催され、6,000本を超える研究発表のオンデマンドビデオがいつでも視聴可能なように提供されます。また、発表者の接続確認、画面共有の周知、マイク・カメラの管理、通信状態の確認等、今までに経験したことのない準備は膨大でしたが、実行委員をはじめ、関係者の皆様の献身的な努力によって無事開催の準備が整いつつあります。
リアルな空間が共有できなくても、こうした情報通信技術は多くの課題を解決してくれています。しかし、本質的なつながりを私たちはどこまで満足しているでしょうか。情報通信技術の力を最大限活用するものの、オンラインでは足りないもの、オンラインであっても実現させたいものに思いを込めて、今回の大会のメインテーマを「つなぐ、集う、楽しむ」としました。オンライン開催の最大の課題である懇親・交流については、LINE、FacebookなどのSNSを活用して今までにない新たな学会大会の形を提案しています。かつての建築学会大会が何を担ってきたのか、そして今後の建築学会大会はどうあるべきなのか、未来に向けて参加者の皆様と一緒に考える大会にできれば幸甚です。
井戸田秀樹