ご挨拶

会長挨拶

竹脇 出
日本建築学会会長
竹脇 出

日本建築学会は、建築に関する学術・技術・芸術について、その発展を図ることを目的として1886年(明治19年)に創立され、2016年に130周年を迎えています。会員数は約3万6千人を擁し、わが国の工学系の学会としては最も古いものの1つです。社会貢献を続ける学術団体として活発に活動し、わが国建築界においてつねにリーダーシップを発揮しています。毎年開催される全国大会は、その最も大切な行事のひとつで、約1万人の会員が集い、総計7千題を超える学術講演、建築デザイン発表会、関係する多くのシンポジウムや研究協議会などが開催されています。また毎年、大会の開催と併せて、開催地の会員諸氏のご尽力により、人々の豊かな生活環境を創出するための、「建築」、「まちづくり」、「子ども教育」などに関わる講演、歴史や文化の発信、災害復興や環境保全に資するさまざまな情報提供など、ひろく社会一般に向けた催しも数多く企画されています。

北陸の金沢で開催される今年の大会のメインテーマは「次の時代は」。開催概要にも記載の通り、建築は社会を映す鏡であるとともに生かす器であり、その在りようを鋭敏に捉えながら最適な変化を導くものともいえます。平成までの先人から受け取った建築という名のたすきを次の令和の時代へどのように繋いでいくのか、今を見つめながら思索する大会としたいと思います。また、2020年の東京オリンピック・パラリンピックや2025年の大阪万博に向けた急速な都市開発や施設整備に伴って、人の動きや自然災害のリスクに関する新たな問題も生じる中で、今まで以上に建築界が一丸となって取り組まねばならない課題が山積しています。

建築という学問分野は、計画/設計、構造、環境など、幅広いジャンルの統合の上に成り立つ性質を持ち、それが建築を特徴づけています。各分野の専門家が広範かつ深長な基盤技術・理論に基づき互いに研鑽し、協働する中から、これまで誰も考えたことがない独創的なアイディアが生まれます。その象徴的な場が、皆さんの集まるこの大会です。是非多くの会員の皆さんに参加いただき、活力に満ちた次世代の若手を育てる活発な議論をいたしましょう。

大会実行委員長 挨拶

永野 紳一郎
大会実行委員長
永野 紳一郎

今年の日本建築学会大会は、石川県の金沢工業大学扇が丘キャンパスを会場として、おわら風の盆(富山市)の余韻を引きながら、9月3日(火)~6日(金)の4日間にわたり開催されます。日本建築学会北陸支部が務める大会としては、2010年(富山大学)以来であり、昨年度の東北大会と同様に9年ぶりです。

前回と異なるのは、2015年に開業した北陸新幹線により、地方都市として金沢の魅力が一層輝くようになったことです。インバウンドを含めて人の流れが活発になり、時代の流れが変わったことを実感できる都市となっています。また、人に愛された伝統的な木造建築が随所に残り、維持されるとともに、周辺空間の活性化を担う新たな公共施設や建築が建てられています。裏日本である北陸の風土に馴染むように設計された建築は、冬の日差しが少ない中で生活空間を楽しむための設計者の知恵が生かされています。まちに出て、建築が語りかけてくる歴史や環境の暗黙知を読み取っていただければと思います。会場の大学キャンパス建築においてもそれが読み取れることと思います。

時代の変化の波に耐えて歴史を育んできた北陸のまちは、本物の建築づくりを考え続けてきた先人たちの努力とそれを受け継ぐ人たちによって維持されていると思います。その一角となる金沢で、街並みと用水をたどり、犀川・浅野川のほとりを歩き、工芸を愛で、食を楽しむ、ひと時を過ごしていただければと思います。

開催場所の金沢工業大学扇が丘キャンパスの大学本館は1969年に竣工して50年が経ちました。バウハウス設立100周年の今年までの時代と重ねると、「次の時代は」建築や建築教育がどのように変わりゆくのかを考える場所としての巡り合わせも感じます。交通は多少不便かもしれませんが、活発なる議論の場となるよう期待しております。