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会長・実行委員長挨拶

日本建築学会は創立127周年を迎えました。全国大会としては114回目です。この大会では、様々なテーマの研究発表会や研究集会、各種の記念行事、懇親会が設けられ、全国から参集した多くの会員がそれらの場を通して情報交換や交流を行います。会員にとっては、最新の情報や新たな知己を得て世界を広げるまたとない機会です。

今回は北海道大学において開催されることになりました。研究発表の題数は約7,200に上ります。その題数は関東での開催時を除いて毎年増加し、過去20年間で、10年毎に1,000題ずつ増加してきております。今回は参加者が1万人に達すると予想され、ますます盛んになってきております。それだけ魅力ある集会であるということです。論文発表に加えて設けられた建築デザイン発表も6年目を迎え定着してきました。また、市民に向けた公開シンポジウムがいくつか企画されており、学会の存在意義や役割を社会にアピールすることも意図しております。

建築は生活の器であると言われています。建築・都市によって構築される環境は、安心・安全が確保され、健康・快適であり、利便性が高く経済的であることが求められます。また、建設される敷地の自然環境、歴史・風土と調和し、美しく、豊かな生活の実現に寄与するものでなければなりません。一方で、その環境を実現する上での制約条件として、自然災害の防止、低炭素社会の実現、少子高齢化対応、縮減都市の問題、都市・建築の構造劣化など様々な課題があります。

今年の大会のテーマは「創つくる」です。以上のような境界条件の中で、いかにしてサステナブルな建築・都市を創っていくかを大いに議論して欲しいと思います。また、東日本大震災から2年3か月が経ちました。ようやく災害公営住宅の建設などが開始されておりますが、まだまだ多くの現場では瓦礫が撤去されたものの何もない状態です。いわばゼロからの出発であり、まさしく創ることが求められています。単に元に戻すのではなく、未来への模範となるまち・むら・住まいの姿を創ることが求められています。そのためには会員皆様の英知が必要です。

大会は、全国各地で開催されてきました。建築・都市はそれぞれの地において特徴ある形態や環境を見せてくれます。それらの建築・都市と接することによって様々な感動を受けるということも参加者にとっては貴重な経験であり、今後の研究や技術開発、設計にも何らかのヒントを与えてくれるはずです。

大会は8月30日から開催されます。季節のよい札幌に是非、ご参集ください。


アベノミクスで景気動向に動きが見え始めたとはいえ、この10年、平均すれば何事も右肩下がりの日本において、歴史ある日本建築学会大会の参加者数は右肩上がりを続けています。一昨年の関東大会において10,000人を突破し、昨年の東海大会でも大勢の参加者をみました。その勢いを受け継ごうと、北海道大会実行委員会を早々に立ち上げ、準備に取りかかっています。

東日本大震災の傷まだ癒えぬ2013年ですが、10年前の2003年宮城県北部の地震で3名が、20年前の1993年北海道南西沖地震で200余名が、そして30年前の1983年日本海中部地震で100余名の尊い命が失われています。記憶の外に追いやられがちな北日本におけるこの繰り返しの自然の猛威に、われわれは何を学び、何を作り、何を育ててきたのでしょう。幾度と痛めつけられても尚、元の地へ回帰する住民を経験の風化・同調性バイアスという言い回しで片付けられるでしょうか。むしろこの行為こそ日本人の「自然」への憧憬と捉え、そこに建築の原点を見いだし、猛威たる自然との調和にチャレンジする建築家も現れ始めたようです。

原点回帰がテーマであった東海大会を承け、「創(つくる)」を旗印に、日本の再生に果たす建築の力を議論しましょう。その「場」として北海道を提供します。自然としての北海道を体感してください。滞在を札幌市内に留めるのではなく、大会の前後は札幌を飛び出し、北海道らしさを是非、体感してください。北海道には、他地域にはない魅力がたくさんあります。一番の特徴は低密度。北海道の集落は基本的にコンパクト。だから、一つの集落を離れると、しばらくは何もありません。刺激は地理的に(従って時間的にも)、ポアソン分布です。新幹線が未整備のため高速移動ができません。その代わり集落から集落の移動でゆったりとした時間がプレゼントされます。変化の乏しい風景を横目に、贅沢な思索の時間へといざなってくれます。距離-時間感覚を北海道モードにリセットし、この夏は、この夏こそは・・・。

お待ちしています。


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